今転売ヤーが批判されているのは「ユーザーの利益」になっていないからではないでしょうか

今転売ヤーが批判されているのは「ユーザーの利益」になっていないからではないでしょうか

池田信夫さんが述べている転売ヤーはイメージが古すぎると思う

2021/7/27

この記事を読みました。
転売はユーザーの利益になる転売はユーザーの利益になる先週から話題になっているホビージャパンの問題が、社員を解雇するという処分に発展した。 【弊社社員の不適切発言に関する社内処分について】 当該社員ならびに関係者の処分につきましてご報告いたします。 また、お客様ならびに関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけ致しましたこと、改めて深くお詫び申し上げます pic.twitter.com/zoE4GhOeBy - ホビージャパン編集部 (@HobbyJapan_MAG) July 26, 2021 問題になった編集者のツイートは、次のようなものだ。 転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られてるのが面白くないだけだよね? 頑張って買えばいいのでは? 頑張れなくて買えなかったんだから、頑張って買った人からマージン払って買うのって、普通なのでは。 うーん... 転売問題が難しいところは、 転売されて困るのが一部のユーザーだけってことで、 ものは売れてるからメーカーも小売りも問屋も売り上げがしっかり立つから、 業界的には安泰なんですよ。 逆に、 いつでも買えて割引ガンガンのかつての状況って、店舗が死ぬので、 業界へのダメージもデカいんです。 これ自体は常識的な指摘だが、プラモのマニアから攻撃が集中し、会社は常務取締役編集制作局長など3人を降格し、編集者を「退職処分」にした。ツイートは懲戒解雇の理由にならないので、これは違法な解雇である疑いが強い。 驚いたのはそこからだ。私がこの処分はおかしいと指摘すると、数百のアカウントから攻撃が集中した。 本当にほしいなら、高値で買えばいいんだよ。それが市場経済というものだ。 https://t.co/mnSyTLCBS1 - 池田信夫 (@ikedanob) July 26, 2021 こういう転売をめぐるトラブルは昔からあり、メーカー側がすべて負けている。 プレイステーションが発売された頃、ソニーは値引き禁止、中古も禁止、これをやると商品を卸さないとして裁判沙汰に。中古ゲームの売買は違法としてソフトメーカーと一緒に裁判もしてけど全敗。自由な取引に制限を加えるのは違法なんです。転売への嫌悪感と適法かは別の問題。 https://t.co/d7ZtvreycE https://t.co/BSsd6Rijky - 中嶋よしふみ@保険を売らないFP&編集長&執筆勉強会の運営&社長専属編集者 (@valuefp) July 26, 2021 フィギュアとかプラモなんか、需要があるならメーカーが単純に増産すればいいだけだよ。 それをやらずに新発一次市場で「最初に買い逃すと次のチャンスはないかもよ!?」「これ持ってるコレクターはすごい!って褒められるかもよ!?」という恐怖訴求と承認欲求で売るから、転売ヤーが発生するのよ https://t.co/8dXSQsCgB1 - 田端塾長@ワンコとの旅を諦めてませんか?Carstayでキャンピングカーを借りればワンコ一緒に旅OK (@tabbata) July 26, 2021 リプを見ていくと「定価」というものがこの世に存在していると思い込んでいる人が実にたくさんいることに驚かされる。そんなものはない、値段は誰でも勝手に付けてよいのだ。売れた価格が正しい価格。元々存在しない「定価」より高いのはけしからんと怒るのは買えない者のひがみでしかない https://t.co/DJY3fmNEh4 - 素顔に戻ろう/新潟市内で唯一素顔で街を歩く男 (@tomtomtomy3) July 26, 2021 「定価」を押しつける価格カルテルは独禁法違反 オタクが怒る気持ちはわかるが、転売屋のやっていることは 安く買って高く売る という市場経済の原則である。高い価格で買う人は、その商品を高く評価しているのだから損していない。それに怒る人は、自分も高く買えばいい。ヤフオクやメルカリなどのオークションと同じだ。 転売そのものの否定って、ほとんど資本主義の否定なのと(流動性が高い=転売しやすい)、最初のプライシングが失敗していて過度に安いから転売される。転売ヤーは「高値を払ってでも欲しい人が入手できるようにする」高付加価値なサービスを提供。 https://t.co/xtxZlRv0U2 - 坂井豊貴 (@toyotaka_sakai) July 26, 2021 むしろメーカーのやっている「定価」を維持する行為こそ、違法な 価格カルテル ... agora-web.jp
転売屋のやっていることは安く買って高く売るという市場経済の原則である。高い価格で買う人は、その商品を高く評価しているのだから損していない。それに怒る人は、自分も高く買えばいい。ヤフオクやメルカリなどのオークションと同じだ。
私もパッと読んだときは、原理としてはそうかもな、と思ったんですよね。


しかし、池田さんの言ってることは多く人が感覚的に「何かがおかしい」と感じたはずなんですよ。少なくとも、「転売ヤーはユーザーの利益になっている」とは感じない人が多いから今回問題になっているわけですね。
原理として池田信夫さんの理屈が正しいはずなのに、実際のところ転売ヤーは全くユーザーの利益につながっておらず、むしろ「転売ヤーがいない方がユーザーの利益になる」という状況になっているというのが多くの人のコンセンサスになっている。
これはなぜなのでしょうか?

池田さんのイメージしている転売ヤーは多分こんな感じ

例えば、背取り屋さんは、ユーザーの代わりに古本屋などをめぐり、入手が困難な本を探します。そうやってコストをかけて見つけた本をインターネットでほしい人に提供する。
ここには、ちゃんとコストがかかっています。
というより、ユーザーさんが求める本を手に入れるためのコストをちゃんと肩代わりしていますここにはきちんと価値が生まれています。
こういう付加価値がついている場合、転売ヤーさんはきちんと価値を提供しています。
売り手にとって見れば「そのままだったら売れなかった商品」に対して買い手を見つけるという価値を提供していますし、買い手にとっても「自分が欲しい商品」を、自分の代わりにコストを負担して調達してくれる、ということでやはり価値を提供しています。
こういう転売ヤーさんは、「ユーザーの利益」になっています。
転売ヤーさんがすべてこういう人たちだけなら、経済的に市場を効率的に回していることになります。というか「卸業者」というのはそういうものですよね。

批判されているのは「全く必要がない」行為をして価格を釣り上げてるだけで、メーカーにも大多数のユーザーにも利益をもたらさないタイプの転売ヤーです

では、メーカーとユーザーが直にインターネットでやり取りができて、「中間が要らない」状態なのに転売ヤーが入る場合でもユーザーの利益になるでしょうか?
メーカーが公式HPでユーザーさんにグッズを提供します。
ユーザーさんは在庫に残りさえあればいつでも公式HPからグッズを買うことができます。
さて、この状況で転売ヤーさんは必要でしょうか?
原則として必要ないと思いませんか?
この状況で、転売ヤーが買い占めをして高値で売ったところで、だれが得をするでしょうか。
ここが問題視されてるんですよね。
◆「卸業者」はメーカー・ユーザー双方の利益にになる。少なくとも両者のコストの一部を負担して価値を提供する代わりに利益を得ている。このオペレーションが適切であれば業者としてメーカー・ユーザーから支持されるし、市場原理を守る存在として認められている。 よく批判されがちなリクルートやパソナグループですら、業者として選ばれたプロセスだとか適切な価格であるかどうかはともかく、きちんと一定の役務・価値を提供しており、その価値に対して利益を受け取っているのです。
これに対して、「転売ヤー」はメーカー・ユーザーの代わりにほとんどコストを負担していない。それでいて、メーカーにもユーザーにも利益をもたらさずその利益をすべて自分が独占する。価値も生み出してないし、自分以外の誰にも利益をもたらしていないのです。 この手の転売ヤーは特に誰からも求められていません。できればいない方が良いと思われています。でありながら勝手に商品を買い占めて、そして高値で売り、その利益を自分だけで独占しています。つまりやってることがパ〇ナ以下です。

古物営業法で取り締まっているのは盗品の故買であり、マスクの場合も違法ではなかった。一時的にボトルネックができる場合もあるが、高い価格で売れると設備投資が促進されて生産は増える。転売で市場が大きくなることは、ユーザーの利益になるのだ。
「違法ではない」 →取り締まり対象になりました。
「高い価格で売れると設備投資が促進されて生産は増える。転売で市場が大きくなる」→一時的な需要の増加は市場が大きくなるとは言いません。
マスクメーカーはいまだにコロナの影響が強いのに「需要の先取り」現象が起きてしまったせいで、価格は逆に大幅に落ち込んでいるのはご存じのとおりです。また、マスクメーカーの市場がおおきくなったとしてもそれは転売のせいではなくコロナのせいですよね。
池田さんの言ってることは無茶苦茶だと思います。

田端さんの「需要があるのであれば増産すればいいだけ」論も今の転売ヤー事情には当てはまりにくいです

田端さんの意見についても突っ込んでおきましょう。
「需要があるならメーカーが単純に増産すればいいだけ」っていう意見について。これは任天堂のSwitchとかリングフィットとか見てたらそう言いたくなる気持ちもわかります。しかし、「価格が高騰しているのは一時的な需給のひっ迫(と吊り上げ)」が原因です。「転売ヤーに買い占められている分」+「本来の需要」を生産すれば、売れ残ってしまいます。
実際、コンテンツ産業や半導体企業のように需給が大幅にブレやすい上に、生産のために設備投資が必要な企業では、そんな簡単に増産はできません。増産のために設備投資を頑張った後景気が悪化して経営危機陥った企業は山ほどあります。
転売ヤー対策のためだけにそのリスクをメーカーに負担せよと言われても、メーカーとしては「ふざけんな」としか言いようがないと思います。田端さんは投資やってるんだからそんなことご存じのはずです。(というか、この程度のことを知らないのに「田端大学」なんてやってるわけないです)。 本当は知ってるのに無知なふりをしてこういう詭弁をのたまうのはすっごい卑怯だと思います

結果として今の転売ヤーは「お金を持っていて金に糸目をつけない人たちだけが利益を享受できる」という状況を作り出している

次に「そうは言っても買う人がいるんだから需要あるんでしょ」「買う人にとっては価値を生み出してるじゃないか」という意見について。
実は、ここだけは否定ができないところであり、これが転売ヤーを支える生命線と言えます。

日本は貧富の差が拡大してきており、平均年収はどんどん減っている一方で、お金を持ってる人たちも増えてきています。「数倍の金を出すだけで手に入るならそのくらい惜しくない」という人は確実にいるんですよね。
また、オタクの中には金がなくても特定の推しのためには借金をしてでも関連グッズやチケットを欲しがるという人がいます。金持ちでもないのにVTuberに惜しげもなく赤スパチャを投げるような人たちまでいますからね。
そういう人たちがいるからこそ、転売ヤーという商売がなりたっています。
つまり、転売ヤーは全く価値を生み出してないわけではなく「庶民たちから商品を取り上げて金持ちor金を惜しまない人たちに譲渡する」という行為をやっているわけですね。庶民から「欲しいものをメーカーが決めた価格で購入する権利」を奪ってるわけです。
これはお金持ちにとっては利益になりますから、金に困ってない人ほど転売ヤーは支持しますし、金がない人ほど転売ヤーを否定するということになり、「金持ちとそうでない人の分断」みたいな話になりがちですね。

いまだかつてないほど転売ヤーが問題になっている原因

という前提を確認した上で、今転売ヤーがかつてないほど問題視されている理由を整理してみます。
①インターネットの結果、転売ヤーがコストを負担せずに人気が出そうな製品を買い占めることが可能になったため
大勢の人が一気に買い占めに参加できるようになってしまったため、実需要100に対して、50とか60とかの転売ヤーが押し寄せることが可能になってしまっているのが現状です。繰り返しますが、こうなってしまうと、田端さんの言うような「増産で対応」なんてできるわけがありません。
②転売のためのプラットフォームが、こうした転売行為を後押ししているため
調子に乗りすぎて爆発四散した「チケットキャンプ」っていう企業もありましたけどね。
③メーカーがユーザー直販の流れを進めていく中で、転売ヤーそのものが価値を生み出すチャンスが減ってきているため 転売ヤーは当然昔からたくさんいるんですが、昔よりずっと価値が減ってきて、それでいて数は増えているから社会問題化しているんですね。
④メーカーもどんどん商品を「ライブコンテンツ化」「希少化」していこうとしくなかで、転売ヤーに遭遇する状況が増えてきたため
単純に、転売ヤーの存在を認知する人が増えてきているということです。
転売ヤーの問題って、商品やコンテンツがどんどんデジタル化していくにあたって減っていくのかと考えていた時期がありましたが、実際はその逆になっています。むしろメーカーはデジタルコンテンツをどんどんフリー化して大量の人にばらまき、「ライブコンテンツ」「レアコンテンツ」に課金させるビジネスモデルが増えてきています。それはソシャゲーに限った話ではなく、いろんなものが「ライブ」に価値を置くようになってきました。
そうなってくると、「希少な商品」「希少なコンテンツ」というのはどんどん増えてくるわけで、転売ヤーの活動範囲も増えてきます。今まで目立たないところでうろちょろしてるだけだったのが、世の中のありとあらゆる場所で見かけるようになってきます。

などなど、転売ヤーはもはや市場原理とか言ってられなくなってくる可能性はあります。こうなってくると、もはや今までの法体系とは違った形で対応がもとめられてくることもないとは言い切れません。
池田氏はこのように書いていますが、
むしろメーカーのやっている「定価」を維持する行為こそ、違法な価格カルテルである。転売はこのようなカルテルを破る行為であり、これを罰する法律はない。例外はダフ屋を取り締まるために2019年にできた「チケット不正転売禁止法」だが、これは市場経済のルールに反する法律として批判が強く、例外的にしか適用されない。
むしろこれから、転売ヤーが市場経済のルールに反する存在と認識されるようになってきたら変わってくる可能性はあるかもしれません。(私はそうはならないと思うけど)




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